平成30年10月28日(日)伊達市ふるさと会館に於いて
「“いのち”の大切さを考えるシンポジューム」が開催されました。
いのちの大切さを考えるシンポジューム
テーマ「若者の自殺とメンタルヘルス」
司会:山地美紗子(ラジオ福島アナウンサー)
「主催者あいさつとパネルデスカッションに対する課題提起」
福島いのちの電話 理事長 丹羽真一
皆さんこんにちは。いのちの大切さを考えるシンポジュームにご参加いただき誠にありがとうございます。
福島いのちの電話は昨年9月1日に開局20周年を迎えました。
私たちの活動は自殺予防を目的として、「一人ぼっちで悩まずに」をスローガンに、午前10時から午後10時まで1日12時間、1年365日休まずにボランティア相談員が電話での相談を受付けております。
警察庁の統計では平成29年における全国の自殺者数は21、321人で、9年連続の減少となっています。ピーク時平成15年34、427人からしますと3分の2に相当し、大幅に減少しております。
しかし2016年のWHOの世界自殺レポートによれば、日本の自殺死亡率は人口10万人当たり19.5の数値で世界ではワースト6位となっています。
ちなみに主要国であるフランスは15.1、アメリカは13.4、ドイツは12.5、イギリスは7.5、イタリアは7.2といずれも日本の数値を大幅に下回っています。日本が自殺大国の汚名を払拭するまでにはまだ遠い道のりがあることを自覚する必要があるでしょう。
福島県の状況を見ますと、自殺者数が4年連続の減少となった平成28年の378人に対して、平成29年は380人と増加しました。これは7年を経過した東日本大震災原発事故関連の自殺者数が7人から12人に増えたということが要因となっています。
震災原発事故関連の死者数は全国では平成29年までに207人になっていますが、そのうちのほぼ半数にあたる99人が福島県民であり、この事実にしっかりと目を向けなければなりません。
我が国の自殺問題は大きな課題を抱えています。それは若者の自殺で危機的な状況にあるということです。
とりわけ中高生の自殺について、平成28年の308人、昨年は346人で38人も増えてしまっています。この数はなんと平成に入って最も多い人数になっています。この異常さに真剣に向き合わなければなりません。
中高生を含む20歳未満の自殺率は福島県がワースト1位で極めて憂慮すべき事態です。このことは過去3年間の平均値を比較した厚生労働省の自殺統計によるもので、20歳未満の人口10万人あたりの自殺者数の順位です。
福島県は10万人あたり4.26人となっていて全国平均の2.53人の1.7倍となっています。
最も低いのは大阪府の1.18人で、それに比べると、じつに3.6倍という現状です。
中高生の自殺の動機としては、学校問題が多くを占めており、続いて健康問題、家庭問題です。
児童生徒の皆さんの生きる世界はほぼ学校がすべてということの裏返しとも言えます。
自殺対策基本法17条の3では「・・・学校は在籍する児童生徒等に対し、心の健康の保持に係る教育または啓発を行うよう務めるものとする。」と、このように子供に伝えたい自殺予防の教育を学校教育として法律で規定されていますが、このような教育を行っている学校は昨年度は全国で16%、高等学校では7%の学校でしか実施されていないという現状です。
更にこうした若者の自殺というのは世界的に見ても日本は異常な状態である。なぜならば世界的に若者の死亡の原因の第一位は日本の場合自殺となっていますが、フランス、ドイツ、カナダなどの諸外国では第一位はいずれも事故ということで、日本は極めて異常な事態であると申し上げているのです。
自殺には多くの場合前兆があり、自殺のサインと言われています。自殺予防の10か条には、気分がすぐれない、自分を責める、といった言動。あるいは、心の問題に限らず原因不明の体の不調や大人であればお酒の量が増える、仕事の負担が急に出る、仕事上大きな失敗をするとか、職を失うなど、自殺の前兆として注意しなければならないサインだと表記されています。
したがって、前兆となるサインを見逃すことなく、適切な関わりを持つことができれば、多くの自殺は防ぐことができると考えられます。
こうした関りを持つのが「ゲートキーパー」(いのちの門番)の役割です。
国を挙げてこのゲートキーパーを養成し、自殺予防の事業を進めることになっています。
ゲートキーパーの活動は、地域の於いて悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて必要な支援に繋げ、見守っていくことです。この活動は地域の絆作りにつながる営みともなっています。
この活動に重要なことは自殺予防に役に立つためには正しい知識と的確な情報を持つことにあると思うのです。これらはゲートキーパー養成講習で身に付けていただくことができます。
福島いのちの電話ではこれまで20年の実践活動を通じた知識とノウハウを活用し、県内で広くゲートキーパーの養成講習を行って支援しています。
この講習を受けられ、真摯にこの役目を担っていただき、講習を受けられた皆さんの連携と関係機関とのチャンネルが不可欠になります。
その事業をサポートする目的で「福島県ゲートキーパー連携センター」を平成30年6月1日に立ち上げました。
ゲートキーパーの具体的な関わり合い方というのは、一人ぼっちで悩んでいる人にその人の常日頃の行動に変化が生じていないか、注意を払って解決策を共に考え見守っていく。まさに寄り添いです。このことがゲートキーパーの役割であり活動です。
自殺は追い込まれた末の死を選ばざるをえない結果でありますので、その予防というのは命を大切にという観点だけではなく、生き安い環境や生きやすい地域づくりの一面であるということになります。
今回のシンポジュームの開催にあたり、ご挨拶とパネルデスカッションの課題提起とさせていただきます。その後の各コーラスの皆さんの合唱もあります。
皆様、折角のお休みのところお集まりいただき誠にありがとうございました。
パネルデスカッション
コーディネーター 佐久間 順(福島民報社地域交流局長)
パネラー 三瓶 弘次(福島いのちの電話理事兼事務局長)
金子久美子(グリーフサポート福島れんげの会理事長)
三宅 祐子(福島県おかあさん合唱連盟会長)
佐久間 パネルデスカッションのコーディネーターを務めさせていただきます福島民報社地域交流局長の佐久間順です。よろしくお願いします。
先ほど福島いのちの電話丹羽理事長からパネルデスカッションを前にして、いくつかの課題提起がございました。
いくつか示していただいた問題の一つに、若者の自殺、とりわけ中高生の自殺が昨年は平成で最多である。又世界的に見て若者の死亡原因で第1位が自殺となっているのは先進国では日本だけであるというお話でした。このことを真摯に受け止め、この残念な状況を真剣に受け止めなければならないということ。更に20歳未満の自殺死亡率について残念なことに福島県が全国でワースト1位ということに、県民の皆さんがこのことの認識が少ないという現状だと思います。このことに関心を高めていかなければならないと思います。
こうした事実を踏まえて若者の自殺に対するメンタルヘルスをテーマとし、その対策についてパネラー皆さんと考えていきたい。その後フロアーの皆さまからのご意見を頂戴できればと思います。
我が国の若者の自殺を減らすためのヒントを導き出せればと思っています。
パネラーの皆さまから5分間程度、自己紹介と、活動状況をお話しいただきます。一巡後伺ったことを基に幾つか質問させていただき、自殺の問題をどういう風な対策が必要かを考えて参りたいと思います。
それでは、福島いのちの電話の三瓶さんから活動とお感じになっていることをお話しください。
三瓶 社会福祉法人福島いのちの電話事務局長の三瓶弘次です。よろしくお願いいたします。
福島いのちの電話は、「一人ぼっちで悩まずに」をスローガンに電話での傾聴であり悩みごとの相談を受けています。いのちの電話は今から65年前の1953年にイギリスでスタートしました。現在では国際連携を図りながら日本いのちの電話連盟の中で活動をしています。
東日本大震災の時にはドイツいのちの電話から震災対応の電話相談活動のためにご寄付をいただきました。いのちの電話は各都道府県に49センターがあり福島いのちの電話は全国42番目のセンターです。昨年20周年の節目を迎え、今21年目の活動を行っております。
現在137名の電話相談員がおり、福島センターと郡山分室の二つのセンターを設けて相談活動をしています。遠くはいわき市、喜多方市、白河市、県外から白石市、角田市在住の相談員もおり、 一人3時間の電話相談を無報酬で担当しています。理事長からもお話ししていただきましたが、午前10時から午後10時まで12時間、1年365日休まずに電話相談を受け付けています。1日当たり約40件の相談を受け、開局21年目をむかえた現在2,930,063件を受けてきました。自殺者数は平成30年には2万人台を切る数値となる減少予想ですが、依然として交通事故死の6倍の自殺者がいる現実です。とりわけ福島県は東日本大震災原発事故関連の自殺があります。
全国各地には現在でも33,000人の方々が避難され、孤独で、あるいは古里を失ってしまった方々が大勢おります。今まではずっと我慢していたが8年が経った今だからこそ話ができる。それをしっかり受け止めこれに寄り添うことがいのちの電話に求められています。全国49センターの協力を得て電話を受けています。“いつでも、だれでも、どこからでも”相談ができることですから、私たちの活動はこれまで以上に求められ必要とされていることをしっかりと心にとめて活動していきたいと思っています。
自殺はそのサインが出されますので、ゲートキーパーという形で、しっかりとそのサインを受け止め自殺予防に繋げていきたい。このことから平成30年度からゲートキーパー養成講座を行って、現在225名の方にこの講習を受けていただいています。
自殺は生きることに追い込まれた末であります。心が弱いとか、先行きが不安になったとか、そういう個人の問題ではなく、追い込まれてしまって死を選ばざるを得なかった結果でありまして、命を大切にと言うことは取りも直さず生きやすい環境づくり、そして地域づくりが自殺予防に繋がるということを訴えたいと思います。改めて自殺は防ぐことができるということを会場の皆様にもご理解いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
佐久間 三瓶さんありがとうございました。東日本大震災後特殊な環境にある福島県でいろいろな相談の窓口として福島いのちの電話がその相談の受け皿の窓口になっている現状であることを述べていただきました。続きまして、福島れんげの会の金子久美子様お願いいたします。
金子 NPO法人福島れんげの会の理事長の金子久美子と申します。
平成30年3月末まで18年間福島医大の救急医療講座の秘書として勤めて参りました。ですから命のはかなさも命の強さもいろいろ感じて参りました。そのことがきっかけで自殺予防に関していろいろな想いがあります。
私は1995年に夫の転勤で埼玉県から福島に引っ越してきました。仕事を辞めて、友人も知人もいないところに引っ越して来ましたので、だんだん自分自身が無気力になっていくのを感じていた頃に、福島いのちの電話が開設の準備をしているとの情報を得まして、お仲間に入れていただいたのが自殺予防とか自死遺族の支援に携わる一歩になっております。
いのちの電話の活動の中で出会ったのが、あしなが育英会の自死遺児の学生さん達でした。まだその頃は、自殺は個人の問題だと片付けられていた時代でした。その時にあしなが育英会の学生さんたちが当時の小泉首相に要望書を持っていきました。その時もなかなか社会の問題とは認識されませんでした。その何年か後の2004年に福島れんげの会を立ち上げ、民間の団体として社会の中で、もう少し命のことを考えていこうとその活動を始めました。
私たちの活動は遺族の方々が集まって想いを語り合うというのが主な活動です。そのほか、命を想うフォーラムの活動を去年に引き続き今年も実施しました。震災でご家族を亡くされた方のドキュメンタリー映画を上映し、その上映の後に主人公であるご家族を招いて映画<LIFE生きてゆく>を撮った監督さんと対談していただくイベントを行いました。監督さん(笠井千晶さん)はそのイベントの最後に映画作成のきっかけを話されました。生きている人の語りの中で亡くなった人が生き続けていくのだ、ということを伝えていきたいという強い決意でした。
大切な人を亡くした後ということは喪失感にさえなまれ、なにもやる気がなくなる時期があります。そういう時に、支え合える場所、生ける場所、語れる場所があるということがどんなに大事か、私たちは2004年からこの活動をしていますので、2019年は15年目になります。その間、いろいろな方が私たちの会を訪れて、いろんなお話をされていきました。その中には、やはり後悔したこと、自分を責めること、そういう言葉が話の端端に出て参ります。
私たちが分かち合いの中で語られることの具体的なことはこの場でお話しできませんが、遺族の方のご承諾ある内容については、この場でお話しさせていただこうかなと思っております。
私たちの活動はグリーフサポートだけではなく、自殺予防の活動と両輪です。このことはとても難しいことで、自死で家族を亡くされた方の支援をしながら、自死を予防することを発信していくのは当初とても難しいことだなと感じていました。遺族の方は、亡くした後に自分を責めて、こんなことになるのだったら、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったというふうに思っています。そういう中で、自死は防げるのだから予防ができるのだということは、自分はそれすらできなかったという想いになるのですね。それを考えるとすごく迷う時期もありました。でも背中を押してくれたのは遺族の方々でした。私たちが出来なくって大事な人を失った、でも今生きていてその苦しみの中にいる人を自分の体験を知ってもらうことで、もしかしたら救えるかもしれない、それが自殺予防に反映されていることを皆さんにも知っていただきたい。そのように思うのです。悲しい体験苦しい体験を乗り越えて、今生きている人たちの役に立ちたい、立たせてほしい。という願いが込められた自殺予防の活動であることを知っていただきたいと思っています。
グリーフとは大切な人を亡くしたということだけではなく、大切なものをなくしたり、大切な関係が壊れたり、これらの後に起こる体や心の変化の状況を指して日本語では悲嘆(ひたん)という言葉で表わされています。
躁鬱体験をした後の傷ついた心のケアを学ぶことは人の痛みに寄り添ったり、寄り添える気持ち持てるようになったり、人の辛さを想像できるようになります。
自分自身も優しい気持ちになり、何か支えることができるかなというような心に傾くようになると思うのです。若い時からこのグリーフについて学んでいただきたいと思います。
たくさんの遺族の方々と出会い命について考えるきっかけを数多くいただきました。
感謝することばかりです。身近に家族を亡くされた方、いま苦しんでいる方がいたら、れんげの会があるよというふうに知っていただき、少しずつこの活動を広めていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
佐久間 金子さんありがとうございました。金子さんからは傷ついた心のケアを考え学ぶこと、相手の気持ちを想像すること、その大切さをれんげの会で活動の中から経験されていることをお話ししていただきました。続きまして、福島県おかあさん合唱連盟会長の三宅祐子さんよろしくお願いします。
三宅 大変貴重なシンポジュームに参加させていただきありがとうございます。
福島県おかあさん合唱連盟会長を仰せつかっています三宅祐子でございます。参加されているお母さん方ともども感謝しております。20歳未満の自殺死亡率が福島県ワースト1位とのお話に驚いております。今回のテーマに沿ったお話ができるかどうか全く自信がございませんが、先ほどのお二人のお話を拝聴し、私共がやっていることは別の意味でつながりがあるのかなと感じております。
私たちの活動を中心にお話し申し上げたいと思います。
福島県おかあさん合唱連盟は来年(2019年)創立55周年を迎えます。現在加盟団体が34団体、団員数は750名の大所帯をもって組織されています。連盟が結成される前からすでに音楽活動をしている合唱団もいくつかあります。中には創立68年や60年、58年の合唱団もございます。
どうして、このように長く継続できるのかなとずっと思うところがございます。多分それは合唱することにいろんな意義がそれぞれ見つけられて励んでいらっしゃるということであろうと思います。
今日出演する3団体は老舗の合唱団でございます。本当にこの長い年月同じメンバーで続けてこられたのは、そこには、皆と一緒に合唱するという大きな魅力や力があったからかなあという想いをいたしております。合唱には仲間と一緒に本気で一つのものを作り上げるその喜びがあります。
声のハーモニーだけではダメなのです。心のハーモニーそれが一番大事。できないけど歌うということ、その世界は連盟の全ての人がおっしゃるのは“楽しめ!”先生に怒られてばかりいるけど、とても楽しい、そんな、とてつもない世界にいらっしゃるわけです。練習の時は隣の人の声を聴きます。
私の声に合わせてね。私は隣の人の声に合わせます。時には呼吸も、心臓に音まで聴こえてしまうのですね。聴き合うということ。それが合唱なのです。隣に人が居てとても安心する、これがコーラスです。先ほどから東日本大震災のお話も出ました。避難されてこられた方々が各合唱団に入団していただきました。大変な思いをされた方々に対し、お入りいただいても何もできない、どうしてよいか分らない。まあ、とにかく一緒に歌ってみましょうよと言って顔を合わせて、そして声を合わせて、目を合わせ体を触れ合って、一緒に悩み、喜び、元気になって頂いたのかなと、思い上がりかもしれませんが、そのように感じております。
そんなことが元気の源になってくださったかなと思っているところでございます。そのような方々と一緒にカーネギーホールにも行ってきました。何よりの大きなプレゼントを頂きましたので、それを大事にみんなで福島の想いを伝えて参りました。
合唱するということは一人一人大きな目標を持って生き生きと麗しく歩む姿、それは最高に見事な作業だと思っております。まだまだ合唱を続けたいという想い、歳は関係ないのです。しっかりと頭の中にキープされ、幾つになっても続けたい。それぞれの方の想いはあると思いますが、多分、 孫や子供や家族に、“かっこいいなおばあちゃん!”そんな風にどこかちょっぴりでも想われたいのかもしれませんが、そんな合唱活動を私たちは続けております。
佐久間 三宅さんありがとうございました。震災後いろんな場所で歌が心の支えになったことで、私も取材をさせていただきましたが、お仲間になった被災者の方々を含め、幾許かの助けがあったのではないかと想像いたします。
ここからは、今までのお話を受けまして、自殺の防止について皆様方と考えて参りたいと思います。
若者の自殺、とりわけ中高生が多いということの課題提起がありました。このことについて三瓶さんの方から、どう考えられてどのような対策が必要なのかを含めてお話しください。
三瓶 若者とりわけ中高生の自殺について、自殺をテーマにするといろいろ反響があります。一つはウェルテル効果というのがあります。自殺の話とか報道がされると連読し連鎖してとか、そういうことがあるので注意しなさい、これはゲーテの“若きウェルテルの悩み”からとったもので、後追い・連鎖に注意しなくてはならない、と言われていることがあります。もう一つは、パパゲーノ効果というのがあります。モーツァルトの“魔笛”というオペラがありますが、その中で自殺を考えた大人が子供達との触れ合いの中で思いとどまっていくという物語。したがって正面から自殺の問題を考えれば、防ぐことができますし、そうしなければならない。まさに両極端であります。
若者とりわけ中高生の自殺については、私はパパゲーノ効果を考えるべきではないかと思います。中高生にとって学校生活は生きる世界のほとんどを占めています。したがって、先生、保護者が率先してゲートキーパーになることが必要だと思います。そればかりではなく、若者の孤立は年長者との関係で生じると言われます。かつては中高生が最初に相談するのは誰かというと友達だそうです。これは平成27年までで、28年29年は「最初に相談するのは誰ですか」と聞きます「お母さん」と答えるのだそうです。そういう意味では保護者の方々に知っていただきたいことがあります。
まず、否定も肯定もせず寄り添う話を聞く、とにかく聴いてあげる。それから、そう思う気持ちを思いやること、何がどうしてだからどうだと言う事柄ではなく、その時辛かった悲しかったのだね、その時の気持ちを聴いてあげる。そして、いつでもどんな時でも大好きだよという気持ちを伝える。
9年間いじめにあっていた女の子がこんなことを言いました。親でも誰でもいいから話せる人に相談して逃げたかったら逃げてもいいのだから、そういう逃げ道というか安息の場を作ってあげること。子供の孤立は年長者との関係で生じるのです、と言われたときに私たちが考えなければならないと思いました。大人が率先してゲートキーパーとなって子供たちを見守ってあげること、これが若者とりわけ中高生の自殺問題について取り組むべきことかなと思います。
佐久間 三瓶さんありがとうございました。自殺のサインという言葉に触れてまいりましたが、先ほど金子さんの福島れんげの会では自死遺族の方々との触れ合いの場面があるとのご紹介がありました。そうしたサインについてどういうものがあるのか金子さんからお話しいただけますか。
金子 最初にお断りしておきますが、私たちの会の分かち合いの中ではその場で話されたことは公開しない、他では話さない、ここだけに留めるという約束があります。ですからプライバシーを守る上で私たちはこれをとても大事にしています。これから話すことは遺族の方の承諾が得られている内容、既に公にされている内容を主にお話をしたいと思います。
自殺のサインについてですが、確かに後から思えば、ということが前提についてサインは出されていることが多いというふうに遺族の方のお話を聞いてそう思います。とはいっても遺族の方が話されるのは“今思えば”というと前段階の言葉が付きます。亡くなってしまったから“あー、あの時のあれがもしかしたらサインだったかも”“こんなに自分は苦しいのだ、ということを私に伝えたかったのかも”というふうに思い起こすわけですね。ですから、遺族の方は後悔の念であるとか、あの時ああしていればという思いがとても強くなります。例えば、今までやる気もなくて家に引きこもり散らかし放題だった部屋を急に片付け始めた、ということがあったとして皆さんはご家族だったらどう思いますか。 それは自殺をするために身辺を整理していると思うでしょうか。私がもし親だったら、あーやっともしかしたら気分が前向きになってお部屋を片付けて次の第一歩としてなにか進める準備を始めたのかなと思ってしまうと思うのですね。要するに、サインというものは本人がいくら出したとしても受け止める方は、なかなか最悪に事態を想定した方には心は動かないということです。だから、自殺が起こってしまった後に家族の方々は“あーあれが”と後悔するわけですね。
私がそういうお話をたくさん聴かせていただく中で、もしかしたらこれがヒントになるのかなと思うことが一つだけあります。例えば、散らかり放題だったお部屋を片付け始めた、今まで引きこもって外に出なかった人が懐かしい人のところに訪ねて行こうとしたり連絡とったりし始めている。これは今までと違う行動ですね。そういう変化が生じたときに、その変化に気が付いたということを、きちんと言葉をかけてみたらどうでしょうか。
自殺のサインかそうでないかというよりも、“あ、何か今までと違ったことがこの人の中に起こっているな”と気が付いたときに、「あら、お部屋を片付けたんだね。どういう心境の変化があったのかな」そういったことをさりげなく言葉かけをしていくことが、もしかしたら死のうと思い詰めていることが、自分に関心を持ってくれている人がやっぱりいるんだ、というふうに思って、もうちょっと生きてみようかなという気持ちに動いていく、そうやって関心を持たれているということが生きる勇気に繋がるのではないかなと思います。
残念ながら、反対に全くそぶりを見せないということもよく語られます。例えば、何日か後に美容室を予約していたり、お友達と食事の約束をしていたり、だからなんで死んでしまったのか、何が理由だったのか、この時どういうふうに思っていたのか全く分からない、そういう場合もあります。ですから何がサインかというのを事前に気が付くということはとても難しいことですが、何かに気付いたときにその気付いたことを、ちょっと本人に声をかけて、本人とのコミュニケーションの一つにしていくことが大事かなと思います。
佐久間 金子さんありがとうございました。ほのめかすようなサイン。三瓶さんのお立場でも電話相談の中でいろいろな場面で、そういう相談者に対していのちの電話ではどのように対応されているのでしょうか。お話しください。
三瓶 いろいろ相談受けた内容についてその内容をお話しすることはできませんが、危機的な電話を受けた時の対応の仕方があります。まず話をじっくり聴くことです。傾聴は人の話を聴くことが90%ですね。以前、伊達市の社会福祉協議会で傾聴について話をさせていただいた折に、こういう質問がありました。「施設に行って傾聴するのですが、しんみりと、時折お話をするだけなのですが、隣はすごく盛り上がっているのです。いやあ、私の傾聴の仕方って駄目なのでしょうか。」との質問でした。傾聴は井戸端会議のように盛り上がるのではなくて、人の気持ちに寄り添って、「実はね!」という言葉を引き出すような傾聴の仕方が大事なのですね。しんみりと、時折ぽつぽつと、また沈黙の時間があったりする、それが傾聴ではないでしょうか。しっかりと話を聴くことでしょうね。それから環境を変えてみることをすすめます。「辛くて、電気を消したまま電話しています。」という時は「じゃあ、電気をつけてみようか、ちょっとお水飲んでみようか、カーテン明けてみると今日はどんな天気?」ちょっと環境を変えてみる、そういうことですね。「又、電話してくれますか。明日、担当は私ではないかもしれませんが、また話聴かせて。」という約束をする。私たちは直接会うということはありませんが、何となく「わかりました。」という返事がありますと次に繋がっていきます。こんなことに気をつけて電話を受けていますね。
佐久間 三瓶さんありがとうございました。三宅さんにお聞きします。歌うことに関して、ある心理学の先生が、”人間は幸せだから歌うのではなく、歌うから幸せになるという言葉がある“と言っていましたが、その歌う効果とは何かについて、改めてお話しいただければと思います。
三宅 歌っているからこうやって元気で居られるのね、と最近皆さんがおっしゃいます。20年も前の事になりますが、“大変おうちが忙しくて、子供の世話や家事あるいは仕事の忙しいとき、歌の練習に出かけるためには家族の協力があります。送り出してくれる家族たちに感謝をしなければいけません。そして、そこに行ける、そこに行けた自分の体や、元気でそこに行けたことへの感謝。そして歌ってみたら本当に幸せ、ふっと振り返ってみたら、こうやって元気で居られるのはやっぱり歌があるからだよね。それが一番正直なところだと思います。歌っているから元気でいられる。全くその通りですね。
佐久間 先ほど中高生の生活の場所は学校や家庭に限られてしまうということでしたが、お母さま方が家庭を離れて別の集団に所属する時間があるということはある意味で解放されるというところもあるのでしょうか。
三宅 いっぱいあると思います。出てきたときの顔つきはまるで違いますね。解放そのものだと思いますが、今は核家族と言いますか、ご一緒にお子さんと一緒にいるということは少ないかもしれませんが、孫たちとか子供たちとかへの気遣いで、特に子供たちには孫のことで口出しできない、遠くから子供たち孫たちを見守ってあまりお邪魔にならないように思いながら、何かできればと日々頑張っているのですけれど、合唱に来ればいろんなことがキャッチできますし、孫についてもそうです。最近の事情についても勉強できます。ですから歌だけでなくいろいろなことが解放と同時に自分のために勉強になり、たくさん得るものがあるように思います。
佐久間 自分の心を受け止めてくれるお仲間がいるという存在の大切さがあるということをお話しいただきました。
三宅 そのとおりです。
佐久間 ありがとうございました。
金子さんにお聞きします。一般には“自殺”という言葉が使われていますが、“自死”という言葉が使われているその意味合いついて、ご存じでない方がいらっしゃると思いますので、ご説明いただけますか。
金子 最近“自殺”ではなく“自死”という言葉が使われていますが、ご存知でしょうか。
自殺の“殺”という文字についてはどのような印象を持たれるでしょうか。犯罪とか残酷なイメージを持たれているかと思います。ご遺族の方にはこの“殺”という言葉を使われることに対して、とても心を痛める方々がたくさんおられます。地域によっては“自殺”という言葉をすべて“自死”という言葉に置き換えた市もあるくらいのことなのですが、私自身どちらも意味合いは同じとは思っておりません。
自死という言葉が初めて使われ、世の中に知れ渡ったのは2002年にあしなが育英会の学生さんたちが出した本の中で、自分たちのことを自死遺児と表現したことがきっかけではないかと思っていたのですが、実は、昔の古事記などを読んでみると自死という言葉が使われていたということをお坊さんから聞いて、あ、そうかと思いましたが、やはりあしなが育英会の学生さんたちがきっかけであろうと思います。
すべてが自死と言うことではなく使え分けをしようという考えに落ち着いているようです。端的に言えば、自殺予防とか自殺対策といった自死に至るまでの経過を語るときは“自殺”という言葉を用いて社会の中で、みんなで何か対策を立てようという意味合いの時には自殺という言葉を使うというふうに、私は理解をしています。また、亡くなったということを示す場合には“自死”を用いることが適切というふうに思い、私も使わせていただいております。でもこれが正しい答えということではないと思いますが、表現を用いる時に丁寧に使え分けをしていくということが大事ではないかと思っています。
佐久間 ありがとうございます。それぞれに意味合いがあるということですね。先ほど自殺は個人の問題ではない、一時期非常に経済的に厳しい時代に自殺が多かった。社会的な要因が重なって、社会全体の問題であるというふうに受け止めるべきことがたくさんあるということですが、三瓶さんから、社会全体の関わり方についてお話いただけますか。
三瓶 個人の心の問題であるにしても、人の心がどうしてそうなったのかということについて社会全体で考えるべきことと思います。特に孤立感、居場所がないということ。孤独はその人の哲学であり人間を成長させるけれども、孤立は決してそうではない。居場所がなくなるとか、仲間はずれにされるとか、そういう孤立のことですね。もう一つは、負担感ですね。お荷物になっているんじゃないかとか邪魔になっているんじゃないかとか迷惑をかけているのではないかとか、ということが大きな要因になっている。孤立と負担感を感じること、これは通常急性的な自殺傾向と言われます。これは個人の主観の問題ですが、その人がなぜそう感じているのか。孤立や迷惑をかけているという負担感をもって悩んでいる人を、社会全体として関わってあげて、周囲の人が力になってあげることができるのではないでしょうか。
たった一度の自分の命を大切にし、生きていけるような社会、これが大切だと感じています。今、福島県では10万人あたり約27人位の自殺者がおりますが、そういう方たちも普通に生きていけるような、その人たちが自分の命を全うできるそういう社会を考えていく。そういう思いを感じています。自殺を真正面から取り扱うことが成熟した社会の在り方ではないかと思うのです。そのことが私たちの活動に繋がるように日々邁進していきたいと思います。
佐久間 ありがとうございました。このシンポジュームのポイントは若者の自殺ということでございますが、どうすればよいのか、難しい問題はあろうかと思います。
金子さんは若者の自殺に関してどういうふうに捉えておられるでしょうか。
金子 大変難しい課題ですね。なんと答えて良いのか戸惑っていますが、私たちの会には20代30代40代くらいの若いお子さまを亡くされた方が参加者としては最も多いです。親の立場で参加される方が多いです。それぞれ背景も違い原因となるべき出来事も違いますが、なかなか親としてできることは限界があるなというふうに話を聞いていて思います。亡くなられた後にいろいろ遺族の方は調べたりお話をいろんな方に聞いたり、している方もたくさんおりますが、身近な自分の友人とか学校の先生とかにちょっと相談していることが結構あります。
統計を取るときちんと相談している人が少ないというふうに数値には現れますが何らかの形で、例えば死にたいという相談をしていなくても、何かちょっと調子が悪いんだよねとか、俺ってだめなんだよなとか、そういったことをどこかで吐き出ししていることが多いです。ですから、そういう言葉を聞くと、お友達も若いですから、自分でできるということはすごく限界があると思いますけれども、その言葉をないがしろにしないで、自分で受け止めきれないと思ったときには、一緒に大人にお話し聞いてもらってみましょうよ。という形で繋げていくことも大事だと思います。
私は大学で時々お話しさせていただいておりますが、自分が一番苦しいときに誰に助けてもらいましたか。どんなことが助けになりましたか。という調査をした先生がおられて、その時学生さんのほとんどが、だれだれにこういう言葉に助けられました。と答えていたというのですね。
確かにその先生の分析の中では、人に助けられるということは人間関係のつながりを持つことではとても大事なことですが、今若い人たちに欠けていることがただ一つだけあると言っていて、花鳥風月にも癒しがある、要するに誰かとの関りの中でしか自分の価値観とか存在が認められないようなことではなく、空を見て月が昇って風が吹いてという自然の中に自分が生かされているんだと気付くチャンスがいっぱいあるのだと若い人たちに気付いてほしいのだというふうに、その先生はおっしゃっておられました。苦しいときって必ず人生の中にはあると思うのですが、先ほどのスライドにもありましたが、“あの時死なないでよかった”という言葉が耳に残っています。まさに、苦しい時期はありますが、それが永遠に続くものではないと信じて、“逃げるが勝ち”ということも大事ではないかと思うのです。
佐久間 今言われたことがこの度の結論だと思います。ストレスと人間関係は切れないもの、ストレスを解決するのも人間関係かもしれない。もっと大きな部分で花鳥風月つまり自然の動きとかそれを取り巻く世界と言いますかそういう部分にも感じる大事な可能性があるというお話でした。人間関係のお話になりますが、先ほどの三宅さんのお話の中で、合唱しているときに隣にいるだけでその方の心臓の音まで聞こえる。つまりそばに誰かがいる感覚というのも人間社会の中で大変心強いものだと思いますけれども、もう一度その辺をお話しいただけますか。
三宅 お一人お一人が自分はこの世界の中で貴重な存在だと思っていただいていると思うのですね。本当にそのとおりだと思います。合唱団の場合は、貴方がいないとできないのよ。それだけに一人一人の責任と良いところ、そして一人でも欠けたら成り立たないんだよ。そんな思いを持ちながらいつも練習しているわけです。合唱と言うのは、心臓の音が本当に聞こえるわけではありませんが、お出でになるということがどれほど安心することか。そんなふうの思っております。なんでも一番相談できるのは、もしかしたらご主人よりも合唱の仲間かもしれません。すみません。
佐久間 大変結び付きが強いお仲間でいらっしゃいますね。はい、三瓶さんどうぞ。
三瓶 メンタルヘルスが大切だと思うのは、本当に落ち込んだときに、さあどうするか。私自身も落ち込んだ時や滅入った時があります。そういう時は洗面所に行って、鏡の前で作り笑いをしてみる。ニコッとしてみる。あるいは涙を流してみる。というのが心の健康につながると思うのです。洗面所で一回二回三回と作り笑いをすると、なにかばかばかしいながらもまた心が温かくなるような気がします。 これは、かの東京の大学の分析だそうですが、本当に笑っている時の脳波と作り笑いをした時の脳波は同じなんだそうですね。私が言っているのではなくて、かの大学の先生ですが、全く納得しましたね。そういう意味で、音楽というのもメンタルヘルスにとっては大切だと思います。何を持ってもその心の健康を保つことになりますし、自殺予防では一番大切なこと。今日のシンポジュームのメンタルヘルスに繋がることと思っていますので、お話しさせていただきました。
佐久間 歌も笑いも大事ということでした。もう一度、三瓶さんにお聞きします。大変難しい点もあるけれども、自殺は防ぐことができるとおっしゃいました。どうすればよろしいのでしょうか。
三瓶 主観的なことですので、ゼロにはならないとしても少なくとも欧米並み、せめて現在の3分の1に減らすことは可能だと信じています。自殺にはいろいろメカニズムがあると言われていまして、まず一つ目は、自殺潜在能力、これは何かというと戦争体験や人にぶつかったり傷ついた恐怖感から逃れる能力、特にスポーツ選手に多いと言われていますが、そういう慢性的自殺潜在能力というのがあります。二つ目は孤立つまり仲間外れあるいは自分の居場所がない。三つ目は負担感に打ち勝つ、このうち二つは個人の問題ではなく社会的に対応できますので、ここをゲートキーパー講習でも一番力を入れるところです。それをきちっとすれば自殺のメカニズムは崩れるということになると思います。したがって周りが気を使って、まず話を聴くこと。人間はしゃべるとすごく楽しくなります。聴くのはつらいです。でもしゃべればしゃべるほど心が浄化されてきます。まず、話をじっくり聴きましょう。話し上手は聞き上手とよく言われますが、それは出来ないからそうなるのだそうですね。まずは、じっくりと話を聴くこと。こういう形で対応していけば、必ずや欧米並みの自殺率になっていくと私は確信しておりますし、信じているからこそ、相談員の方々は1年365日電話をとって寄り添うことができるのかなと思います。そう言う意味で必ず自殺を防ぐことができると思います。
佐久間 ありがとうございました。金子さん、ゲートキーパーの大切さについて改めてお話しいただけますか。
金子 いろいろな調査をすると、亡くなる直前は精神的にダメージが大きくてうつ状態であるというのが、ほとんどの方がそうだというふうな調査結果が出ています。うつ状態うつ病にはどうなって起こるのか。入り口はいろいろあります。例えば経済的にうまくいかなくなったとか、人間関係が壊れてしまったとか、会社をリストラされたとか、昇進して急に任されている仕事が増えて荷が重くなってきたとか、そうしたちょっとした変化がいろいろ重なり合って最終的にうつ状態になって、死を選んでしまったというのが調査の結果に現れています。
ゲートキーパーというのは、亡くなってしまう間際のうつ状態のところで何かをするというのはとても難しいことですし、そこは専門の方にお任せしていい部分だと思います。その入り口の部分ですね、例えば環境が変わったり、何か大きな喪失体験をしたり、そういったところであれば、出来ることはたくさんあると思います。そういったちょっとした気づきの中で声を掛けたり手助けをしたりということが最終的には人々が生きていくうえで生きやすい世の中になって、したがって、自殺も少し減っていくというようなことになっていく。ゲートキーパーとは、そういう入り口のところで気がついたことをきちんと対処していくことではないでしょうか。
佐久間 ありがとうございます。身近な場所に身近ところに居てくれる。広い意味で言いますと地域社会の中でそういう人たちとの繋がりがある程度存在するということが大切であるということですね。三宅さんにお聞きしますが、大きな観点から地域社会が自殺についてどういうふうに考えていけば良いでしょうか。
三宅 とても大きな問題でね。今までは本気になって思ったことはないのですが、今までのお話の中で事実として分かったわけですから、これからどのようにお役に立てるのか今一度考えていきたいと思います。とにかくみんながどこかに相談できる、誰かが私の想いをしっかりと聴いてくれる、そんなところで、身近にそういう人がいる状態を皆さん求めていかれたらいいと思います。
先ほどお子様を亡くされたお母さんはどれほどか悲しまれただろう、そのお気持ちは痛いほどわかります。もしかして時がたった後にでもいいからお仲間になっていただけたら何かちょっとお役にたつかなと、これも思い上がりではございますが、そんなふうに思った次第です。
佐久間 三宅さんありがとうございます。時間も迫ってまいりました。
折角ですのでパネラーの皆さまのお話しを聞いて、ご意見ご感想を伺って参りたいと思います。
(質問2件、割愛)
佐久間 この辺でまとめさせていただきたいと思います。
パネラーの皆さんのお話しから、いろいろな集団に所属することによって、多様の価値感に触れる機会を持つことが大事である。いろいろな場面で、学校でも家庭でも集団のなかでも、サインを見落とすことのないように、命の門番と言われるゲートキーパーの存在が重要であり、その養成も大切だということが皆様から述べていただきました。相談できるチャンネル・窓口が多く設けられれば身近な人を含めて、受け止める場所がたくさんあることによって、救われる気持ちもあるのではないかと思います。
国は平成28年に自殺対策基本法を改正しまして、誰もが生きることの包括的な支援の一つとして自殺防止に関する支援が受けられるように、都道府県にも計画作るように求めております。福島県も第三次自殺対策推進行動計画をまとめまして、平成33年までには自殺者を350人以下にするということを目的としております。減らすための具体的な対策というのも行政も民間も一生懸命やらなければならないのですね。
お三人から心に残る言葉をたくさん頂きました。心のハーモニーが大切。語れる場所も重要である。逃げたかったら逃げてもいいのだ。とも言われました。公的にも民間にも様々な支援相談の窓口が用意されて、少しでも迷える人を救える環境が整えられるよう、今回参加された皆さんと共に少しずつ努力していければなと思って、感謝しているところです。
90分間あっという間でしたが、こうした充実したパネルデスカッションのコーディネーターを務めさせていただき、私自身大変勉強になりました。本日はありがとうございました。パネラーの皆さん会場の皆さんありがとうございました。